大判例

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東京高等裁判所 昭和60年(う)613号 判決

職権をもって調査するに,原判決は,判示第1の業務上過失傷害の訴因につき,被告人が運転した車両の車種についての記載を遺脱しており,従ってまた,判示第2の無免許運転の訴因中「前記車両を運転した」旨の判示についてもそれが如何なる種別の車両であるのか判文上必ずしも明確ではない。そして,記録によると,本件は,被告人が普通貨物自動車を無免許で運転し(判示第2),業務上過失傷害を惹起したものであることが明らかであるところ(判示第1),原判示第1については,その判文を仔細に検討すると,同判文中「自車」とあるのは自動車(道交法2条1項9号)の意であることが明らかであり,従って,原判示は措辞正確を欠くけれども,自動車を運転して判示の業務上過失傷害の所為に出た旨を判示したものと解することができるから,判示第1の判示は,自動車による業務上過失傷害の判示としていまだ理由不備の違法があるとまでは解せられない。また,判示第2については,「前記車両」の判示を,前記自動車と判文上解し得ること前記のとおりであって,自動車の運転免許は,免許の種類により運転することができる自動車等の種類が異るものであるから(道交法84条ないし87条),如何なる種類の免許を有していなかったものであるのか,すなわち運転にかかる自動車の種類を特定し,明示することが望ましいことは言うまでもないが,記録によると,被告人は,昭和56年8月,従来有していた普通運転免許の取消処分を受け,何らの運転免許をも有していないことにつき争いのなかったものであることが認められるから,かかる場合においては,無免許運転の判示として,単に免許を受けないで「自動車」を運転したと判示しても,右判示は適正を欠くけれどもいまだ理由不備の違法があるとまではなし得ないものと解するのが相当である(なお,本件起訴状にも,原判決と同様,公訴事実第1(業務上過失傷害),第2(無免許運転)の訴因の記載にあたり,自動車の種類の記載を遺脱しているところ,原審がその補正を命じた形跡は存しないけれども,記録によると,前記のとおり,被告人が無免許で普通貨物自動車を運転して業務上過失傷害を惹起したものであり,右につき争いのなかったものであることが記録上明らかであり,被告人は,原審第1回公判において,事実は全部間違いない旨陳述し,弁護人も同様の陳述をしているほか,右記載の遺脱について何らの異議を述べていないことが明らかであり,また右記載の遺脱によって被告人の防禦権が侵害されたことは全く存しないことも記録上明白であるから,右起訴状の記載をもって,いまだ訴因が特定されず起訴を無効とするものではないと解するのが相当である)。

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